「本質の美しさ」エヒメアヤメを見に行く

春のやわらかな光に包まれた4月12日。私は筑紫野市の山あいにある平等寺地区へ、「エヒメアヤメ」を見に行った。地域の取り組みとして、「エヒメアヤメ保存会」が主催の見学会でup to spaからは私を含めて3人セラピスト達と向かった。

少し肌寒い朝の空気の中、澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込みながら、静かな山道をゆっくりと歩き出す。日常の喧騒から離れ、ただ鳥の声や風の音だけが響く時間は、それだけで心と体を整えてくれるようだった。

平等寺は、筑紫野市の南西部に位置し、太宰府市や那珂川市に隣接する山あいの静かな集落だ。
市街地から車で30分~40分ほど離れると、景色は一変し、人工物が少なくなり、豊かな自然が広がる。
住民の半分以上が高齢者というこの地域では、昔ながらの暮らしや知恵が今も息づき、自然と人とが無理なく共存している。その穏やかな空気感に触れるだけで、どこか懐かしく、心がほどけていくのを感じた。

今回のお目当てであるエヒメアヤメは、筑紫野市の天然記念物に指定されており、市内で自生しているのはこの平等寺だけだという。
自生地までは平等寺公民館から緩やかな山道をおよそ20分ほど歩く。
急な登りではないが、自然の中を一歩一歩進む時間は、自分の呼吸や足音に意識が向き、心が整っていく感覚があった。

エヒメアヤメは環境省のレッドリストにも掲載されている絶滅危惧種のひとつで、学名はIris rossii。
日本では限られた地域にのみ自生する非常に希少な植物だ。草丈は10〜20cmほどと小さく、その名の通り可憐で繊細な姿をしている。
春のほんの短い期間だけ、淡い紫色の花を咲かせるその様子は、まるで生まれたばかりの赤ちゃんのように儚く、優しい存在感を放っていた。

山道を進んだ先、ふと足元に目をやると、小さく咲くエヒメアヤメが広がっていた。
その光景に、思わず息をのむ。
派手さはないのに、確実に心に届く美しさ。
静かに、でも確かにそこに在るその姿は、どこか人の生き方にも重なるように感じた。

このエヒメアヤメを守るために、地域の方々が日々手入れをし、環境を保ち続けていることも知った。
雑草を取り、踏み荒らされないように配慮しながら、この小さな命を未来へ繋いでいる。
人の手が入ることで自然は壊れるのではなく、守られることもある。
その絶妙なバランスの上に、この景色は成り立っているのだと深く実感した。

美しさとは、ただ見た目だけではなく、そこに込められた時間や想い、そして守り続ける人の存在によってより深くなるものだと思う。
今回の体験は、そんな“本質の美しさ”に触れる時間だった。

また来年も、この小さな命に会いに行きたい。
そして、この場所の静けさと温かさを、また感じたい。
そう思わせてくれる、心に残る一日となった。

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